Users' voice

TOKAI HITの商品が生み出すイノベーションのドラマをお伝えします。

植木 亮介 氏 - 東京大学大学院 工学系研究科 化学生命工学専攻 山東研究室

2016/01/20
  • 研究概要

「化学」をベースとしたアプローチで再生医療の実用化に貢献することを目指しています。

具体的には、細胞増殖や分化に関連する増殖因子に着目し、その機能を肩代わりする人工分子の開発を行っています。人工増殖因子が誘起する細胞遊走を「顕微鏡で見る」ことによって、その効果を検証しています。

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  • タイムラプスの内容を教えて下さい。

– どんな細胞をメインで観察されていますか?→ ヒト上皮細胞など
– 使用される容器は何になりますか? →プラスチック製ウェルプレート
– 検体の温度は何度に設定されますか? →37˚C
– 培養期間はどのくらいでしょうか? →24 h
– 観察方法は?→ 位相差

 

  • 研究の目的・ゴールは何でしょうか?
    今回東海ヒットさんにお世話になったのは、人工増殖因子の開発に関するプロジェクトです。増殖因子は細胞の増殖・分化などの機能制御に関わるタンパク質として知られており、再生医療技術に貢献することが期待されています。一方で、天然のタンパク質の製造にはコストや品質管理の問題があるため、化学合成可能な人工物でその機能を代替することができないかと考えました。
    そこで、私たちは化学合成可能なDNAからなる人工増殖因子の開発を進めています。合成DNAのコストは組換えタンパク質より低く、化学的にも安定です。また、生物系のラボの方ならよくご存知と思いますが、DNAの合成技術は広く普及しており、配列情報さえあれば1-2日の間に目的のDNAを手に入れることができます。
    最近、肝臓細胞増殖因子(HGF)と同様にHGF受容体を活性化し、細胞の増殖や遊走を誘起する人工増殖因子の開発に成功しました(論文リンク)。今はまだコンセプトを示した段階ですが、今後は、幹細胞の分化などの応用展開を含めて、本当に「使える」技術になり得るかどうかというところを検証していきたいと考えています。また、単にライフテクノロジーとしての面だけでなく、ケミカルツールとしての応用も進めたいと考えています。例えば人工増殖因子と天然増殖因子の間で「違い」のようなものがあるのか?もしそうであるならば、その違いがどのように発現しているのかを調べることで、新しい発見があるかもしれないと考えています。

 

  • どういった時に研究のヒントが浮かびますか?
    普通に生活していて、突如雷が落ちてきたかのように思いつくような経験があれば、(そしてそのアイディアが素晴らしければ)こういった場で堂々と披露できるのでしょうが、残念ながら、研究のことを考えている時しかありません。実験ノートを見て考えたり、文献を調べたり、ディスカッションをしたりしている時などでしょうか。しかもヒントと言って良いか微妙な妄想や思いつきがほとんどです。

 

  • 研究に行き詰った時には何をしますか?
    研究をしていると、思うように進まないことが頻繁にあるのである意味、それが日常なのかと思います。なので、そのもどかしさを発散、あるいは少しの間でも忘れることができる環境が大事なのかも知れません。自分の実体験では「気候」が大切だと感じました。博士課程の時に半年間フロリダに研究留学していたのですが、ポジティブな結果が出ない日々が続いていました。ただ、フロリダのやたら青くて高い空と太陽を見ていると、不思議と気落ちしませんでした。最近では、天気が良い時に少し遠くのコンビニまで歩いたり、学外のお店まで歩いて食事をしたりして気分転換しています。

 

  • 子供の頃になりたかった職業は何ですか?
    子供の頃は自分が働いている姿がイメージできなくて、よく考えず「実家の農家を継ぐ」などと言っていた記憶があります。ただ、気付いたら普通高校に入学し、更には大学にまで進学していました。工学部を選んだ理由も「就職しやすそう」という漠然としたイメージでした。この辺り現代っ子にありがちなフェノタイプではないかと自負しています(もうそんなに若くないかもしれませんが)。学部1年次の有機化学の授業で分子の性質や反応性について学んだところ、高校化学でフラストレーションが溜まっていた部分が納得できるようになり、化学に強く惹きつけられたことが転機で今に至るのですが、もし他の学部を選んでいたとしても、自分なら他の何かを見つけて違う道で楽しくやっていたのではないかと思います。

 

  • 東海ヒット製品の実用性、機能、サポート、サービス等についてのどう思われますか?
    今回、上記の人工増殖因子の開発において、東海ヒットさんの培養装置を利用してモデル細胞での遊走挙動のタイムラプス観察を行いました(動画リンク)。装置のセットアップ・レクチャーなど非常にスムーズに行っていただいた印象です。今回使用しました装置(製品型式:INUBG2TF-WSKM)は、非常にわかりやすいデザインとなっており、直感的に温度やCO2濃度の情報読み取り・調整ができました。大変満足しています。

図2
自動合成機によってDNAを化学合成しています。

図3
HPLCによってDNAの精製を行っています。

 


植木先生、今回は年末でお忙しいところ、東海ヒットのUSERS’ VOICEの第一弾にご協力頂き、誠にありがとうございました。

今後とも先生の研究のお役に立てるよう頑張って参ります。

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